公開前に確かめる7つの順番
資料の「業務外利用者(一般利用者)のリスク低減方策」の項目を、画像を作る前から公開する前の順に並べました。頁は資料に印刷されたページ番号です。
| 順 | 確かめること | 文化庁の資料の記載 | 資料の項目 |
|---|---|---|---|
| 1 | 使うサービスの利用規約 | 規約で、他人の著作物を入力することなどが禁止・制限されている場合がある。利用するサービスの規約を確認し、従って使うことが必要。 | 4-1-1(24頁) |
| 2 | 既存の画像を入力していないか | 既存の画像を指示として入れる(Image to Imageなど)とき、入れた作品と似た生成物を作らせる目的だと、享受の目的が併存しているとされ、著作権法第30条の4が適用されない場合がある。その場合は権利者の許諾が必要。 | 4-1-3(25頁) |
| 3 | 作品名・キャラクター名をプロンプトに入れていないか | 既存の作品そのもの、題号、キャラクター名のような固有名詞を入れると、既存の著作物を知っていたことを推測させる間接事実になり、依拠性が認められやすくなる。 | 4-1-6(27頁) |
| 4 | できた画像が既存の著作物に似ていないか | 公開する前に、まず既存の著作物と類似していないかを確認する。方法として、インターネット検索(画像検索)の活用が例に挙がっている。 | 4-1-5(26頁) |
| 5 | 私的に使うのか、公開するのか | 作ること自体は私的使用で適法にできる場合があるが、インターネットでの配信や複製物の譲渡は、権利制限の範囲外になる場合が多い。 | 4-1-4(26頁)・4-1-7(27頁) |
| 6 | 作り方の記録を残す | 依拠性がないことを説明できるよう、生成に使ったプロンプトなど、生成の過程を確認できる状態にしておくよう努める。 | 4-1-6(27頁) |
| 7 | 問題が起きたときの動き方 | 著作権侵害が起きたときの対応(利用の停止・再開、権利者への対応など)を、あらかじめ考えておくことが望ましい。 | 4-1-2(25頁) |
表の「記載」の列は、資料の文章を短く言い換えたものです。法律の適用は個別の事情で変わるため、紛争や商用の案件は、権利者や専門家への確認が必要です。
「似ている」と「真似た」は別の確認
資料は、著作権の侵害になる要件として、既存の著作物との「類似性」と「依拠性」の両方が必要だと説明しています。
つまり、見た目が似ているかどうか(結果)と、作る前に何を入れたか(経緯)の2方向から確かめることになります。作品名やキャラクター名を入れる、既存の画像そのものを入れるといったことは、依拠性の判断で不利になる材料だと、資料が挙げています。
資料は、AIを使わない場合と違い、利用者が既存の著作物を知らなくても、AIの仕組み上、既存の著作物に似た画像ができて、その利用が侵害になることがあるとも書いています。知らなかったから大丈夫、という確認の仕方では足りないということです。
画像検索で確かめるとき:編集部が補う実務の目安
資料が例に挙げているのは「インターネット検索(文章検索・画像検索)の活用など」という一言です。具体的なやり方は書かれていないので、ここから先は、資料の記載ではなく、編集部がこの確認を実際に行うときの目安です。
- できあがった画像をそのまま画像検索にかけ、似た構図・配色・キャラクターの特徴をもつ既存の作品が出てこないか見ます。
- 人物や動物のような特定のモチーフは、画像の特徴を言葉にして、文章検索でも確かめます。
- 見つけた似た作品があれば、公開しないか、描き直すかを決めます。「少し違うから大丈夫」と自分で決めきれないときは、権利者や専門家に聞く方向に寄せます。
- 検索で何も出てこなくても、似ていないことが保証されたわけではありません。確かめたこと自体を記録に残す意味があります。
作るのは適法でも、公開は別の判断になる
| 使い方 | 資料の整理 |
|---|---|
| 自分だけで楽しむ、家庭内で見る | 個人的または家庭内、またはそれに準じる限られた範囲で使う目的なら、仮に既存の著作物と類似性・依拠性があっても、権利者の許諾は必要ありません(私的使用)。 |
| 学校の授業の中で使う | 教育機関で、教員や生徒が授業の過程で使う目的なら、その目的の範囲での利用には、原則として権利者の許諾は必要ありません。 |
| SNS、ブログ、ネット配信、売る | インターネットでの配信や複製物の譲渡は、権利制限規定の範囲外になる場合が多いと考えられています。だから、似ていないかの確認が必要になります。 |
資料は、生成そのものが適法にできる場合でも、生成物をさらに利用しようとする場合は、著作権侵害を生じさせないかを確認する必要があると、まとめています。「作るのに問題が出なかった」ことが、「出しても大丈夫」の根拠にはならないということです。
侵害になるかどうかと、AI画像に著作権があるかどうかは別の問題
資料は、不十分な著作権の理解に基づく誤解の例として、AI生成物の利用で既存の著作物の著作権侵害が生じるかという問題と、AI生成物に著作権があるかという問題を混同することを挙げています。この記事で扱っているのは前者、つまり他人の権利を侵していないかの確認です。
自分が作った画像が著作物と認められるか、他人に使われたときにどう主張できるかは、別の確認になります。資料は、著作物かどうかは、利用者の創作意図と創作的寄与の程度によって判断されると書いています(業務利用者向けの項目、21頁)。
資料自身の断り書き:全部やっても、責任がなくなるとは限らない
文化庁の資料は、チェックリストの方策を全部記載どおりに実施しなければ、直ちに法的責任が生じるわけではないと断っています。逆に、全部実施すれば法的責任を何も問われない、ということでもないと書いています。
この記事の7つの順番も、同じ位置づけです。確かめる順番を示すもので、安全の保証ではありません。仕事で使う場合は、資料の「AI利用者(業務利用者)のリスク低減方策」(17〜22頁)に、社内ルールの整備や取引先への説明(21頁)といった項目が加わります。肖像権、商標、ロゴ、実在の人物の画像は、この記事の範囲の外です。人物やロゴはAI画像の権利・公式ロゴ・人物画像注意、権利の確認全体はAI生成物と著作権を確認するを見てください。
記録に残すこと:編集部の例
資料が求めているのは「生成の過程を確認できる状態にしておく」ことまでで、記録の形は決められていません。次は、1枚ごとに残す項目の編集部の例です。
- 作った日と、使ったサービス・モデルの名前
- プロンプトの全文(作品名やキャラクター名を入れていないことが、あとから読めるように)
- 参照画像を入れたかどうか。入れた場合は、その画像の出どころと使ってよい根拠
- 公開前に画像検索をした日と、検索で見たことのメモ
- 公開した場所と日付
あわせて読む
よくある質問
AIで作った画像は、自由に公開してよいですか?
自由とは言えません。文化庁の資料は、AIで画像を作ること自体が適法にできる場合でも、公開などの利用の段階では、既存の著作物との類似性・依拠性の確認が必要だと整理しています。
公開前の確認は、何でどうすればよいですか?
資料が例に挙げているのは、インターネット検索(文章検索・画像検索)の活用です。あわせて、プロンプトに作品名やキャラクター名を入れていないかを見直し、生成に使ったプロンプトなどを残します。
既存のイラストを入れて、似た画像を作ってもよいですか?
似た画像を作らせる目的で既存の著作物を入力する場合は、著作権法第30条の4が適用されない場合があり、その入力に権利者の許諾が必要になることがあると資料に書かれています。
この記事の確認をすれば、問題にならないと言えますか?
言えません。資料自体が、記載の方策を全部実施しても法的責任を問われないという意味ではない、と断っています。判断に迷うときは、権利者や専門家に確認してください。
出典と確認日
以下は2026年11月2日に文化庁のサイトで確認しました。文化庁のページには、更新日の表示がありません。資料の日付は令和6年(2024年)7月31日で、その後に差し替えられた版は、ページ上に見当たりませんでした。
- 文化庁「AIと著作権について」(資料の掲載ページ)
- 文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日・第1部4「業務外利用者(一般利用者)のリスク低減方策」24〜27頁、「このチェックリストについて」5頁)
運営:ちんあなご編集部。内容に誤りや古い点があれば、お問い合わせからお知らせください。